ただ恐いというだけではなく、ディテールを細かく書き込んだ濃~い作品が多数集まりました。
「怪談を書く人は健康的な人が多いですね。バランスがとれてないと、怖さって出ないですよ。みなさん、バランスのとれた人ばかりでおもしろかったですね。すごくいいですよ~」と、稲川氏も大満足。
稲川氏が選んだのは下記の5作品。サイン入り著書&除霊香を手に入れる、この冬一番怖い怪談はこれだ!

 
銀のヘルメット  「Motto」さん

話の筋は基本的なものなんだけど、すごくおもしろいですよ。これは私の好みでもあるんだけど、恐怖の状況にしっかりと、グーッと入っていくところが怖いと思うんです。

我々はよく「日常」って言葉を使うけど、日常の生活って、案外と平凡じゃなかったりするんですよね。「今日は一日なにもなかった」といっても、電車の中で意外な人間を見てしまったとか、意外なものを発見したとかあるじゃないですか。実はそれほど平凡に生きたりしてないですよね。

そして怪談というのは、すぐそばにあるから怖いんですよ。自分のすぐそばにある。特別にどこそこに行ったというんじゃなくて、自分の生活のなかの日常が、ある瞬間に非日常になっちゃう状況。その怖さが、この作品にはありますよね。

この作品は時間帯もおもしろいですね。怪談というと「草木も眠る丑三つ時」というのが定番だから、午後11時くらいっていうのはすごく半端な時間ですよ。それが、いいですよね。いかにもありそうじゃないですか。 家にいる人であればそろそろ寝ようかなとか、仕事が忙しい人であれば家に帰ろうかなっていう時間帯。都会ならまだ電車が走っているけれど、田舎だったら交通手段がなくなっちゃうという、いろんな状況がフーッと浮かんでくるんですよ。読んだ人はみんな自分の午後11時が浮かぶんですね。

その時間、電話ってのはけっこうかかってくるもんなんですよ。そして舞台は北の土地でもって、どのくらい寒いかわからない。状況もね、相手を迎えに行かなきゃならないんだけど道がわからない。相手がどこで待ってるかもわからない……。
これはね、怪談をよくわかっている人ほど、より怖く感じると思うんですよ。現実味があって無理がない、それでいてちゃんと非日常を描いてます。
 

  吹雪の中のベルの音 「独りGodへの道」さん

好きですよ、こういう状況。ただ、電話ボックスの中の状況をもっと強めて書くとおもしろくなると思いますね。自分の心理とか状況をね。
たとえば雪のなかに足跡をみつけて、それが電話ボックスにつながってて、行った足跡だけあって、帰りの足跡がない。中に誰か入っているのかと思って自分も行ってみたが、誰もいない。でも気配を感じる。そういうのもおもしろいと思いますよ。

電話というと思い出すのが、あのね、これは自分が体験した話なんだけど…… >>続きを読む

開いた金庫 「やせるドットコム」さん

けっこうおもしろいね。でも、「金庫になにか大事なものを入れておいたんじゃないか」という心理描写を初めから入れているといいと思うんですよね。そうすると、もっとおもしろいんだけどな。
「この話自体が金庫に入ってたんじゃないの」みたいにしていいんじゃないかという気がするんですよね。金庫が開いた。ああ、そういうことだったのか。この話は金庫の中にあったんじゃないか、と。
発想は悪くないですよ。ただもう一つなにかほしかったなという気がしますね。
 

  真夏の夜と都会の海 「forwarding agent 【宅配人】」さん

これね、いいんだけど、絵にするのが難しいですね。あるはずのない住所が、「107号室」になってるんで、それを取り壊したっていうのは、部屋だけ取り壊したのかなって、ちょっとひっかかった。昔は地方に行ったりすると、公務員宿舎が一戸建ての家で並んでて、それだったら一軒だけ取り壊したってわかるけど。
それから、あるはずのない部屋に届けられる荷物って、いったいなんなんだろうかと思うじゃないですか。そういうところが入ってきたら、またおもしろいですね。

うろつく幽霊な人々 「紫苑の一人語りから」さん

もう1段階2段階あったら、もっとおもしろいですね。 仏壇がらみの話っていうのは、私の工房(*)のまわりにやたらとあるんですよ。地方でいうと、茨城にもけっこうこういう話がたくさんありますね。
でもいちばん怖いのは岐阜ですよ。私は心霊スポットで最恐(さいきょう)は、岐阜だと思ってますね。岐阜って、あの人の出身地ですもんね。福来友吉さん。あの例の「貞子」のモデルになった超能力者の研究した方も岐阜ですよ。あそこは多いんですよ。たくさんありますねえ。

*工房……タレントとしてだけでなく、工業デザイナーとしても活躍中の稲川さんが使用される作業場